ジョン・フランケンハイマー

ブラック・サンデー [DVD]

ブラック・サンデー [DVD]

今日なにげに立ち寄った家電量販店でブラック・サンデーのDVDが8月に発売になる事を知った。この「ブラック・サンデー」と言う作品は1977年、米国でのヒットをうけて日本でも夏休みの目玉として結構大きく宣伝されていたのだが公開一週間前に劇場への爆破予告があり公開中止となった前代未聞の曰く付き作品だ。結局日本ではそのまま劇場公開はされずお蔵入りとなった幻の作品なのだが、既にビデオやLDではリリースされているので今回のDVD化が日本初公開と言うわけではない。監督はジョン・フランケンハイマー。60〜70年代に「大列車作戦」や「グラン・プリ」、「フレンチ・コネクション2」等玄人好みの作品を多数残した職人的な監督だ。私個人としては大好きなウィリアム・フリードキン監督の出世作フレンチ・コネクション」の続編を撮った監督…と言うのが第一印象で今でもこの印象は拭えない。フリードキンは「フレンチ・コネクション」でアカデミー作品賞と監督賞を受賞したが当時監督としては60年代に既に一定の評価をされていたフランケンハイマーの方がランクが上で「フレンチ・コネクション2」撮影時には新人監督の作品の続編を巨匠が撮るなんて!と話題になったらしい。しかもフリードキンがこの続編に激怒したなんて言うエピソードもあったのでフリードキンファンの私としてはフランケンハイマーなんて…と言う思いが強いのだ(映画少年だった頃の大昔の話ですが)。
フレンチ・コネクション」と言う作品は1作目はジーン・ハックマン演じるポパイ刑事の体当たりなアクションシーンが話題となりクリント・イーストウッドの「ダーティ・ハリー」シリーズと共に後の刑事物ドラマに大きく影響を与えた金字塔的作品だ。アカデミー作品賞も受賞している。これに対して続編の2の方はストーリーやキャラクターを全て引き継いだ完全なる続編なのだが派手なアクションシーンは無くポパイ刑事の内面部分を前面に出したドラマ中心となっている。この続編は賛否両論で傑作を台無しにしたと怒る人もいるし浜村淳の様に1作目を超えた続編としてべた褒めする人も少なくない。私個人の感想を言えば作品そのものの出来は1の方が完成度も高く面白いのだがジーン・ハックマンの演技は2の方が凄かったと言う感じだ。麻薬中毒となったシーンやラスト10分の走り続ける演技はジーン・ハックマンの役者人生で1番の演技と言っても言い過ぎではない迫力だった。
ブラック・サンデー」はそのフランケンハイマー監督の最高傑作と言われている。原作はトマス・ハリスのベストセラー小説でパレスチナ・ゲリラとモサドの戦いを描いたサスペンスなのだが、映画は前半のテロリスト達のドラマ部分と後半の飛行船でスタジアムを襲撃するアクション部分を見事にミックスさせた良質の娯楽作品に仕上がっている。9.11以降テロと言うものを身近に感じられる様になった分、今見るとまた違った感想も味わえるかもしれない。と言うかようやく私もアクションよりもドラマを落ち着いて観られる歳になったという事なのかもしれない。いや、今でもくだらないB級アクション映画が一番好きなのですがね。
そう言えばフランケンハイマー監督が亡くなったのが何年か前の丁度今頃の季節だった(これですね)。確かニュースになった当時、エキサイトで氏に関するコラムを1本書いたと思う。もう新作が生まれる事はないと思うと残念でならない。80年代以降はテレビのエミー賞を4回も受賞しているらしいのでその辺のドラマも今なら観てみたい。亡くなる前にもうちょっと興味を持って追いかけてみれば良かったなぁと思う監督だ。